日本のジャズの扉を開けた天才、大西順子

私は中1の終わりにジャズに目覚めた。きっかけは、マイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』であった。

 

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その後、私はジャズにのめり込んで行くと同時に、日本のジャズも聴いたのだが、すごい、と思ったのは阿部薫渡辺香津美さんだけで、渡辺貞夫も日野晧正も山下洋輔も好きになれなかった。

日本人にジャズなんて無理なんだ、と思った。こういう人、同世代に多い。

 

ところが長い月日を経て、1993年、私はレコード屋大西順子の『WOW』を手にし

(今、話題の大西順子か)、と思い、何の期待もせずにCDを買い、帰宅してフィリップス・LHH700のCDトレイにCDを乗せた。

すると私は

 

(/゜□゜;)/

 

となった。

(すごい天才の登場だ!)、そう確信した。

 

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その後、大西順子は日本人初のヴィレッジ・バンガード連続出演を行い、大快進撃を進めたことは皆さん、ご承知の通り。

とにもかくにも、大西順子の登場は、一大センセーションだった。

 

そして

 

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山中千尋

 

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グレース・マーヤ(この人は、本当はブルースの人だが)

 

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纐纈歩美

 

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寺久保エレナ

 

という天才が登場し、日本のジャズ・シーンが活気づいた。本場、NYのジャズより楽しい。

意図して女性ミュージシャンを挙げている訳ではない。本当に天才だからだ。

また、ベーシストには、俵山昌之、井上陽介、鳥越啓介と言った天才が、ドラマーには、本田珠也、山田玲(あきら)と言った天才が現れた。

 

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井上陽介さん)

 

 だが、大西順子の登場は実にタイムリーだった。

ジャズ・ファンが今ほど高齢化することなく、人口も多く(8年ほど前から若いジャズ・ファンも増えているが)、何よりもCDが売れに売れている90年代にデビューし、活躍していたことが、タイムリーだった。この大西順子の登場がなくば、山中千尋、グレース・マーヤ、纐纈歩美、寺久保エレナの登場もあり得なかったかも知れない。

 

では、大西順子の何がそんなにすごいのか。

テクニックのことよりも、2016年3/16のライブで私が経験したことを記した方が、大西順子のすごさを物語る。

 

アルバム、『Tea Times』のレコーディングの前か後でのライブか忘れたが、その『Tea Times』の楽曲が中心のライブで、2ndステージが物凄かった。

曲名を忘れているが、ポリリズムの曲で、冒頭から大西、ベースの井上陽介さん、ドラムの山田玲(あきら)くんがリズムを合わせられず、2度、中断した。

それが奏功した。

曲のリズムに3人がノッたら、大西順子が井上さん、山田くんを完全にシカトし、暴走した。

 

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1997年、98年に東京で大西順子のライブに触れたことがあるが、この日の暴走ぶりはハンパなかった。

大西順子のすごさは、紛れもなく、ハード・ドライビング・ピアノとリリシズム溢れる知的で静謐なピアノ・プレイにある。

だが、この日のハード・ドライビング・ピアノはとんでもなくすごく、直ぐにドラムの山田くんも井上さんをシカトし、暴走した。山田くんは、ジョン・ボーナムのフレーズを何度も叩いた。連打した。

 

ここまで書けば、ロック・ファンなら、ご存じの様に、調子が良い時のLED ZEPPELINのライブ同様なのだ。

暴走する大西順子と山田くんをつなぎ止め、かろうじて楽曲が崩壊するのを防いでいた井上さんとの3人の間で化学反応が生じ、物凄いライブとなった。

これが2ndステージ全体を通し、果てはアンコールまで続いたのだから私は狂喜乱舞した。

 

ジャズの場合、メンバーが固定化せず(していても短期間)、常に流動化している宿命上、東京までジャズを聴きに行っている私は、メンバー間で化学反応が生じたライブを経験していない。この2016年3/16の大西順子トリオの他には、2011年6月、ブルースアレイ・ジャパンでの纐纈歩美カルテットでのライブだけだ。

 

ただ、大西順子の場合、天才にありがちな常軌を逸したことをする為に、駄作なアルバムをつくってしまう。

バロック』もそうだったし、『Tea Times』も残念作だった。『Tea Times』ではポリリズムが中心の楽曲にしたいが為に、コンポーザーに菊地成孔を迎えたのだと思うが、菊地は凡人だ。故に、失敗した。

 

けれども、昨年、正気を取り戻した大西順子は、『グラマラス・ライフ』と『ベリー・スペシャル』の傑作アルバムを出し、ファンを感動させてくれた。

 

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でも、狂気の状態時での大西順子の傑作アルバムを聴きたいものだ。

 

何にしても、大西順子が日本のジャズの扉を開けたのだ。